脳性麻痺 の20代女性、大阪ロボケアセンターでのNeuro HALFIT®︎プログラム
転倒が増え、腰痛が出現してきている 脳性麻痺 の20代女性、N様の事例を大阪ロボケアセンターよりご紹介します。
転倒防止と二次障害予防のため、Neuro HALFIT®︎プログラムを行った結果として、動作の改善が見られました。
目次
初回カウンセリング時
2021年の2月6日に、転倒防止と二次障害の予防目的として、大阪ロボケアセンターにお母様と一緒にいらっしゃいました。
この方は、早産による影響で、脳性麻痺となられ、それ以降、運動障害となられたとのことです。現在は、ロフストランド杖で歩行されており、お仕事にも通ってらっしゃいます。日常生活の歩行時に、不安定さから屋内外を問わず、週に1回、多いときはそれ以上の転倒があるとのことでした。
お身体の状態としては、主に両下肢に障害がみられます。
転倒の際は、ご自身の足に引っかかり、転倒することが多いとのことでした。
そのこともあり、転倒する原因を探るため、ご本人の動作や身体機能の評価を行うことを入念に行うことから始めました。
すると、歩行の様子から、足先が左右ともに内向きになっており、つま先も引っかかりやすい状態なのが確認できました。
① 座位の状態で、足関節の背屈の動きを見ると、他動による関節可動域には制限はありませんが、ご自身で動かす際の、運動範囲は両足関節ともに少ない状態でした。
背臥位にて膝伸展位にすると、座位の状態よりもさらに背屈範囲は少ない状態でした。
② 次に座位にて膝関節を確認すると、他動による関節可動域に制限はありませんが、ご自身で両膝を伸展して頂くと、写真のように左右共に、伸展が45℃付近までの状態でした。
両下肢とも伸展の際は、ご自身の上肢でベッドを押さえた状態での伸展でした。
③ 股関節をみると、他動による関節可動域は、両股関節ともに外転が0、外旋も0の状態で関節可動域に制限がありました。ご自身での、外転、外旋運動は困難な状況でした。
④ また、体幹機能に関しては、可動域の範囲が狭く、骨盤の前後の動きが殆ど見られない状態でした。
現在の状況 (2022年5月現在) 27回来所
立位、歩行の姿勢が良くなりました。
日常生活での転倒はなくなり、転倒の不安が大きく軽減したことから、外出に対して積極的になり、プライベートでは旅行を楽しむことが出来ていらっしゃいます。
① 足関節は座位で背屈できる範囲が大きくなっています。
膝伸展位での背屈も背屈できる範囲が大きくなっています。
初回体験時から継続して、H A L®単関節タイプの足関節アタッチメントを使用して、プログラムを行ってきました。
プログラムを実施し、経過を確認していくと、徐々に背屈筋の生体電位信号の量が増してきました。
それと同時に底屈筋の生体電位信号も、ご自身での背屈運動の改善につながりました。
座位での背屈運動が増加した後、膝伸展位での背屈も運動範囲の向上も見られました。
② 膝関節はご自身で膝を伸展できる範囲が大きくなっています。
初回体験時より、単関節タイプのモニターを使った膝伸展の運動学習により、ご自身での膝の伸展範囲が改善しました。
当初は、膝の屈曲筋の生体電位信号が同時に見られ、膝の伸展運動の妨げになっていましたが、単関節タイプのモニターを使った膝伸展の運動学習により、屈曲筋の生体電位信号をご自身でコントロールする事が出来るようになりました。
そのことから、同時に膝の伸展筋の生体電位信号の量も増加しています。
③ 股関節を見ると、関節可動域は改善が見られ、ご自身での外転、外旋運動の範囲も増えています。
初回体験時より、股関節に関しては、ストレッチやマッサージガンによるリラクゼーションにより関節可動域の改善を計るように介入してきました。
ご自身での運動に関しては、単関節タイプのモニターを使用する運動学習を行い、結果として、ご自身による股関節の外転運動、外旋運動が可能になりました。
当初、外転筋の生体電位信号が極端に少ない状態でしたが、この部分の生体電位信号にも、増加が見られています。
④ 体幹を見ると、骨盤、脊柱の可動範囲が大きくなっています。
体幹機能の改善を図る為、CYBERDYNE社のC-toを使用し、座位での骨盤の前後傾、左右移動のバランストレーニングを行いました。
繰り返し行っていくうちに骨盤の動きが、ご自身で出せるようになりました。骨盤の前後傾の練習を行うことで、脊柱筋も鍛えられることから、歩行時の姿勢も良くなっています。
また、歩行時には、歩行動作に必要な片脚に荷重を掛ける動きが殆ど無く、身体を左右に振り歩行をされていましたので、ここでもC-toを活用し、立位でのバランス練習も実施しました。具体的には、C-toの立位バージョンの運動で片脚に体重を乗せる練習を実施しました。
始めは、今までしたことが無い動きに怖さも感じていらっしゃいましたが、徐々に荷重を掛けることができるようになり、歩幅の改善、また、余裕を持って脚を降り出す事が出来るようになるため、着地時の足のつま先の向きも前を向くようになってきています。
二次障害(腰痛)について
最初のカウンセリングの際にお話のあった、二次障害については、大きく2つあり、
- 就労中、デスクワークがメインで、腰痛を感じる
- 通勤中、痛みで立ち止まり動けなくなる時がある
という事でしたが、大阪ロボケアセンターに通い始めて、HAL®︎を始めとする様々な機器やテクノロジーを活用したプログラムを継続し、少しずつ腰痛が減ってきているそうです。
ご自身でも取り組める体幹機能向上のプログラム、ご自宅でのリラクゼーション方法などをお伝えすると、頑張ってセルフケアを行なっているとお話をして下さいます。
このように、ロボケアセンターに通うだけではなく、日々ご自宅でも自主トレーニングに励んでいただいている事が、お身体の変化、二次障害の予防に繋がっているのだと思います。
N様は旅行が大好きな方で、大阪ロボケアセンターへお越しの際は、旅行の話でいつも盛り上ります。
旅行雑誌を見ながらスタッフと「ここの旅館ええなぁ」「この食事美味しそうやなぁ」とプログラムの休憩中なのに、時間を忘れて見てしまいそうになる事もあります(笑)
でも、時々ですが、旅行雑誌を見た後に、生体電位信号の数値が増えていた事もありました(笑)
今後は歩容の改善を目標に継続して取り組まれる予定です。
私達スタッフも、N様と共に過ごせる時間を楽しみにしています。
HALの動作原理はこちらをご覧ください。
バランストレーニングができるC-toはご自宅でもレンタルできます。