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装着型サイボーグHAL®️によって繋がったボッチャ大会へのエントリー

目次

【S様の紹介】

S様は60歳代の男性で、広島市内に奥様と2人暮らしをされています。病前は、地域での活動に積極的に参加し、地区の体育協会に所属しスポーツの普及に努めておられました。特にペタンクの普及には力を入れて取り組み、様々なイベント等の開催も手がけられました。
2014年に発症した脳梗塞の後遺症により、左半身に運動麻痺があり、左上肢はご自身の意思で動かすことができませんでした。歩く時には左足に装具を装着した上で、4点杖を使い、付き添いが必要な状態でした。
リハビリテーション(以下、リハビリ)は、週に3回リハビリ特化型のデイサービスに通い、個別リハビリに加えて様々な運動機器を使用したマシーントレーニングを続けていました。
広島ロボケアセンターのご利用に至った経緯は、2017年の広島ロボケアセンターの開所時に開催したオープニングイベントでした。そこで、HAL®を知り初回装着体験を申し込まれました。

【2019年7月 Neuro HALFIT®️プログラム初回装着体験】

 初回利用時は、自宅内では装具と杖を使用することで歩くことができてはいましたが、朝方や夜間帯、屋外での移動は車椅子を使用されていました。S様には車椅子を脱却し杖で歩く場面を増やしたいという希望がありました。
そこで、初回体験時にはHAL®️自立支援用下肢タイプ(以下、HAL®︎下肢タイプ)の体験を実施しました。
HAL®️装着前の歩容は、4点杖と両脚を順番に出し、4点杖と脚を揃える3つの動作(3動作揃え型)で、10mの距離を歩く(以下、10MWT)ことに要する時間は62秒、バランス能力をみるTimed Up and Goテスト(以下、TUG)では80秒を要していました。

一般に10MWTの所要時間が25秒以上では、歩行が屋内に限定され、TUGの所要時間が13.5秒以上であると転倒しやすいとされています。S様は屋内での歩行においても不安定な状況が推察されました。
HAL®️下肢タイプを使用した歩行プログラムでは、右脚だけでなく運動麻痺がある左脚でも生体電位信号(以下、B E S)が検出されており、CVCモード(B E Sをもとに装着者の意思に基づいた動作補助が得られる)での歩行練習をオールインワンと呼ばれる歩行器を使用し、前方と後方の2人のスタッフの介助で実施しました

開始時はHAL®️の装着による違和感を感じたり、アシストされることに不慣れなため、歩行動作が拙劣で疲労感も強い状況でしたが、脚を互い違い前に出す歩き方(前型歩行)をプログラムの中では意識し、初回は20mの歩行を8セット実施して終了しました。

【HAL®️下肢タイプによる歩行プログラム】

初回体験時から両脚のBESが検出されていたため、HAL®️下肢タイプのCVCモードを積極的に使用しながら、歩行プログラムを実施しました。ご利用開始後の数回は、HAL®️のアシスト量の調整やHAL®️に慣れることによる自己の身体との同調性を整えることから始めていき、左脚の股関節を動かすことへの意識付けや左脚への荷重移動、自己の身体を支えるといった感覚への働きかけをモニターを通した視覚的な情報や声かけにより反復的に実施していきました。回数を重ねることで、左脚への荷重量の増加や歩幅の拡大を認めました。その後、オールインワンを使用したHAL®️での歩行プログラムに慣れてきたタイミングで、連続歩行時間と歩行距離を増加させるために、トレッドミルを使用した歩行プログラムへと移行しました

時速0.5kmの速度で3分間を1セットとし開始しましたが、開始直後はオールインワンを使ったプログラムとの違いから左脚の振り出しが拙劣となったため、左脚の徒手的な介助を要していました。これも回数を重ねることで左脚の振り出しも安定していき、現在は時速1.0kmの速度で、5分間を3セット実施することが可能となっています。
週1回のNeuro HALFIT®️プログラムを約1年半継続し、歩行ではこれまで使用していた4点杖から1本杖に変わり、歩容も3動作前型歩行となっています

また、歩行速度やバランス能力の向上の結果、10MWTは34秒、TUGは48秒まで所要時間の短縮を認めています。日常生活場面では傾斜により発症後は車椅子で訪れていたご先祖様の墓参りをご家族の介助を受けながらも、杖で歩いてお参りすることができるようになりました。

【HAL®️腰タイプを使用した体幹・起立動作プログラム】

 HAL®️下肢タイプを使用した歩行プログラムを進めていく中で、歩行安定性の重要な要素となる体幹部分の不安定性も影響していることが、浮き彫りとなっていきました。また、体幹部分が安定しないことから、車椅子やベッドからの立ち上がり場面でも、右腕の力を利用した動作パターンとなっており、体幹の前方方向への動きや両脚への荷重が不十分でした。
よりスムーズに動けるようにするために、HAL®️下肢タイプでの歩行プログラムと並行してHAL®️腰タイプでの体幹・起立動作プログラムも実施しました

HAL®️腰タイプの特徴は、体幹を伸展する(背筋を伸ばす)筋肉のBESをもとに動作をサポートするため、体幹の前屈位(上半身を前にかがめた状態)から後屈(上半身を起こした状態)する動作や起立動作での体幹の伸展等の動作時の身体負荷量を低減することができることにあります。そのため、起立動作を想定した体幹の前後屈動作や起立運動、立位でのスクワット運動が軽負荷で反復することが可能となり、その結果体幹機能や起立動作時の動作円滑性や車椅子上での座位姿勢の向上を認めました。

【障がい者スポーツを通した社会参加】

 S様の奥様は、広島ロボケアセンターのご利用開始以前よりS様との外出やイベントへの参加を積極的にサポートしており、病前はS様が地域のスポーツ普及に尽力されていたことからS様の障がい者スポーツへの参加に対しても興味・関心を持たれていました。特にペタンクに近い競技であるボッチャに対しては、県内の団体への問い合わせをするほど強い関心を持たれていました。
今回、Neuro HALFIT®️のプログラムを重ねていく中で、ボッチャに必要となる体幹機能が向上したことと、周囲からの後押しもあって、市が主催するボッチャ大会にエントリーすることとなりました。S様はNeuro HALFIT®️と出会い、プログラムを重ねていくことで身体機能が向上し、再びスポーツ大会へのエントリー※を果たしました。広島ロボケアセンターは引き続き、S様の希望に寄り添い、支援をしていきます。

※本大会は広島市主催で令和3年5月の開催を予定されておりましたが、市内の新型コロナウィルスの感染状況および感染防止の観点から延期となっております。

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