腓骨神経麻痺の方へのHALの介入
北九州ロボケアセンターは2019年に、国内10番目、九州で2番目に開設した施設であり、九州医療スポーツ専門学校に併設しています。専門学校内に開設しているロボケアセンターは全国でも当施設のみであり、スタッフも学校での医学教育とともに装着型サイボーグHAL®を使用したプログラムを両立して学生や地域の方々への支援に取り組んでいます。
さて今回は、最近当施設に改善の期待をもって来られる機会が増えた「腓骨神経麻痺」の利用者様へのアプローチと結果をお伝えしようと思います。
腓骨神経麻痺という言葉は聞き慣れない方も多いと思いますが、腓骨神経というのは腰の背骨から出る神経のうち、膝の外側から足部にかけて走る神経の部分であり、その神経が何らかの要因で障害され足が麻痺してしまう疾患です。症状としては足首が上に持ち上がらない、つま先を上げられない、足の甲が痺れ感覚がなくなるなどです。特に生活上では足首が垂れ下がることでつまずきやすく、とても歩きづらくなることが問題となります。原因は長期のベッド生活や麻酔後などで姿勢により腓骨神経が持続的に圧迫されて起こることが多く、概ね半年程度で少しずつ回復される方が多いですがそのまま回復しない方もいらっしゃいます。
今回お二人(A様、B様)を紹介します。
A様はがん治療のため入院され、退院後に腓骨神経麻痺が出現された方です。発症3か月後に来られ、Neuro HALFIT®プログラムを実施しました。当初は足指がわずかに動く程度でしたが、介入1ヵ月程で装具なしで歩行や階段昇降ができるようになりました。
3か月後にはほぼ元に近い動きが可能となり小走りで階段昇降をされるようになりました。MRI画像上で筋肉に炎症や浮腫などが起こっていた部分も正常に近い状態になり、動きだけでなく体の内部的にも改善がみられていました。
もう一人のB様は、5年程前に自分で激しく前屈ストレッチをした後から急につま先が上がらなくなり腓骨神経麻痺と診断され、その後病院や整骨院など様々行かれましたが症状変わらず経過されていた方です。介入時は足と指を上げる動きはみられず、足の甲は痺れた感覚も強い状態でした。しかしHAL®を使用すれば動かすことができたためNeuro HALFIT®プログラムを開始。エコー検査では足首を上げる筋肉がほぼ機能していない状態がみてとれました。筋肉の硬化や関節の固さもあるため運動やリハビリなど独自のプログラムも交えて介入していますが、数回の介入でHALを外した後でも自力で足の動きが確認できるようになりました。久しぶりの動く感覚に大変喜ばれていました。
お二人ともHAL®を使用することで、自分では動かなかった範囲まで足を動かすことができていました。今までどれだけ脳が「動け」と命令しても動かない足。その足が、脳が命令すればしっかり動いて答えてくれる。この感覚をA様、B様ともに何度も喜びを交えて感じ取り、集中して脳に覚えさせているご様子でした。現在、A様は改善して当施設をご卒業され、B様はこれからさらに動きを引き出し次回エコー検査の結果で変化がみられるよう奮闘中です。
脳卒中や脊髄損傷、その他筋肉や神経の病気などを患い、「脳が命令すれば動いてくれる」この当たり前の感覚が失われた時、多くの方が例えようのない喪失感や失望感に陥られます。そして様々な施設を転々とされ最後の希望をもってロボケアセンターに来られる方も多くいらっしゃいます。皆さまの望みを一緒にサポートできる喜びを感じますし、その望みが達成できるようHAL®とともに全力で介入させていただきます。体験も受け付けておりますので、是非一度HALをご体験ください。